COLUMN

コラム

2023.12.10

精神的成長に向き合う子育てを。

通勤電車の中は数年前とは大きく様変わりしている。ラッシュの車内で少しの隙間を確保して、一生懸命新聞や雑誌を読む姿はもうそこにはない。ほぼと言っていいほど、電車の中はスマートフォンだらけ。気が付くと、ワイヤレス・イヤホンを付けている人の割合が圧倒的に増えていることに驚く。もともと日本人は公共の場所では大声で話すなど騒がしいことをしない国民である。なので、昔から電車の中の会話も比較的静かであった。しかし、現在は大袈裟な言い方をすれば、無音なのである。全く話し声は聞こえない。静かである。You Tubeやインスタグラムで動画を観ている人、LINEやSNSでメールのやり取りをしている人、それぞれである。通勤時間を活かし、仕事のための情報を得る時代から、趣味を優先し静かに情報収集する時代に変わって来たように思える。
そんな中、帰宅途中の電車で向かいに座った子ども達の面白い会話が耳に入って来た。塾帰りの小学6年生か中学1年生ぐらいだと思う。一人の子どもが今度の休みに何をするか問うと、隣の子どもが「母ちゃんと喧嘩しているから家にいたくない。どっか遊びに行く。」と返答をした。すると「なんで喧嘩したの。」と聞き返された。家にいたくないと言った子どもは、ソファでテレビを見ていたときに母から「アイスクリームを取って来い。」と言われ断ったら、このことから口論になったと言う。すると質問した子が「それはお前が悪いよ。お母さんはいつもご飯作ったり洗濯したりしてくれてるだろう。そんなお願い事を断るんだったら、お母さんだって、食事や洗濯してくれなくなるよ。それでいいの。」すると「母ちゃんはいつも俺に言ってるよ、自分でできることは自分でやれって。そう言ってる母ちゃんが冷蔵庫からアイスクリーム取って来いと言うのはおかしいだろう。」あまりに大きな声のやり取りに普段静かな車内はいつの間にか、皆がこの二人の会話に聞き入っていた。私は途中で乗り換えがあったため、この話の顛末までは聞けなかった。

この会話のあまりの素直さと母を思う気持ちに、心の中で二人に拍手していた。どんなに社会が変化しても子どもの素直さは変わらぬものである事を再認識させてもらった。
冷静に話を聞いていると二人の話はどちらも正しいことを言っていると思う。多分であるが、この会話は二人の子どもの精神的成長の違いから生まれているのではないかと思った。お母さんと喧嘩した子どもはもう一人の子どもより精神年齢が進んでいるのであろう。親離れが始まっているのかもしれない。かたやお母さんと喧嘩した友人を嗜めていた子どもは、まだそこまで至っていないのであろう。心理学者ではないが、だから同じ正しいことの会話がすれ違っているように見えた。

自分の子育てで、親としてこのような精神的成長という現象を前もって理解し、子どもと向き合って来れただろうか。自分も含め、きっと親の方が子どもを観る目が保守的に固まったままになっていたように思える。情報社会が莫大なスピードで進化し続ける現代、子どもの持つ情報量は親の子ども時代の何倍にもなっている。難しいであろうが、子どもの成長を一生懸命観ながら、精神的な成長に合った対応をする子育てが必要になって来ていると思う。

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