2025.12.10

先日、某予備校の理事長から聞いた話なのだが、思っていた以上に驚かされている。日本の大学・短期大学では「定員割れ」が深刻化していて、教育政策や地域社会の将来にまで影響を及ぼす重大な問題となりつつあると言うのである。特に私立大学では状況が顕著で、2025年度には全国594校中316校、率にして約53%が定員を満たせなかったようである。前年よりは若干改善したものの、大学全体の「定員割れ半数超」と言う構造は近年あまり変わっていないと言う。一方で入学定員充足率(募集した入学定員に対して、実際に入学した学生の割合)は100%を超えているように見える。しかし、この背景には、大学側が募集定員を削減し、見かけ上の充足率を高めている側面があると言うのである。
調べてみると、短期大学の状況はさらに厳しい。短大の9割前後が定員を満たせておらず、全体の充足率も7割台にとどまっている。かつて女子教育の中心的役割を担った短大全体が、少子化・四年制進学志向の影響を強く受け、存続そのものが課題となるケースも増えてきている。
定員割れを促す主因は明らか。言うまでもなく18歳人口の減少で1990年代には約200万人いた18歳人口は、近年は110万人前後にまで縮小している。今後も減少が続くと見込まれる中、大学数はほぼ横ばいで推移したため、供給過多の状態が生じている。また都市部への志望集中が顕著で、地方大学や小規模大学ほど定員割れが深刻化する「地域間格差」も問題を複雑にしているとのだと思う。
このような状況下で、多くの大学が生き残りをかけた改革を進めている。学部・学科の再編、情報系・医療系など需要の高い領域への転換、地域連携型教育の強化などが代表例である。また、留学生受け入れの拡大によって定員を補う動きも広がっている。しかし、これらの施策がすべての大学で成果を挙げているわけではなく、特に短大や地方の私立大学では資源不足から改革が十分に進められないという課題も残っているようである。
定員割れは単なる「学生数不足」ではなく、教育の質の維持、経営の持続性、地域の高等教育機能の存続に関わる問題である。大学淘汰の時代が現実味を増す今、国・自治体・大学が一体となり、人口減少社会に適応した高等教育の再設計が求められているのではないだろうか。
※次回につづく(2026年1月10日更新予定)