COLUMN

コラム

2022.07.10

頭の良い悪いは遺伝ではなく、知的生活習慣であった。

知能に関わる遺伝子はX(エックス)染色体に乗っており、男の子は母親からだけX染色体をもらうので母親の知能を受け継ぐ―と言う説が、まことしやかにささやかれていた。東京大学名誉教授の石浦章一教授(分子生物学)によると、近年、ゲノムの解析技術が目覚ましく進歩し、一つの結論が出たと言う。頭が良くなる遺伝子はなく、知能は遺伝子で決まるものではないことが分かったと言う。つまり、母親(親)の知能が息子(子ども)に遺伝することはない、と言うのだ。

私はつい最近、石浦教授のこの研究結果を知るまで、子どもの知能は遺伝だとばかり思っていた。頭の悪い親からは頭の悪い子ができ、頭の良い親からは頭の良い子が出来るのだと信念に近いほどそう思っていた。

しかし、石浦教授は、一般に賢い母親の子どもは賢いとは言えるとしている。東大生には共通の傾向が見られるという。親は常に家で勉強している、本がたくさんある、幼い頃から動物園や科学館などによく連れて行ってもらった、食卓を囲んで親といつも時事問題などについて議論している。東大生の親は意識が高く、子どもが小さい頃から知的好奇心を刺激する良い環境を与えていると言う。「賢い母親は、子どもの能力を伸ばすようにうまく導くことが出来るので、子どもが賢くなるのです。」と知的生活習慣が決め手だと言う。人間の脳細胞の数は5~6歳で決まる。その後、不要な脳細胞は少しずつ消去され、重要なものだけを残して10歳ぐらいまでに神経回路が作られる。特別なことをする必要はないそうで、本の読み聞かせや虫捕り、楽しいコミュニケーションなど、何気ない日常生活の積み重ねが大切だと言う。「遺伝ではなく、栄養やさまざまな経験、良い環境、知的生活習慣などが、知能の発達に大きく寄与する。最終的には努力した時間で人生は決まる。」と石浦教授。最近は共働きの家庭が多く、お母さんは非常に忙しいが、30分でもいいから子どもと向き合い、心や手をかけてあげると知能は伸びると助言していた。

私も昔から持っていた偏見に近い「子どもの学力の決め手」の考え方を大きく変えなければならないと悟った。

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