COLUMN

コラム

子どもの頃、学校に行く楽しみが二つあった。勉強が嫌いだった私、ひとつは体育の授業、そしてもうひとつが給食だった。たぶん給食がなかったら、毎日学校に行かなかったかもしれない。私だけに限らず、給食をみんなが楽しみにしていた。
一昨年コロナ感染拡大が始まり、自宅待機学習になると親からは子どもの昼食の用意が出来ない、大変だと言う意見が多く上がった。特に共働き世帯の多い現在、企業のリモートワークが広がっていなかったこともあり、子育て世代では、親が休んで子どもの面倒を見なくてはならない局面を迎えていた。学校給食のありがたさを再認識させられたのではないだろうか。
国公私立の小学校・中学校の給食実施率(文部科学省/2019年2月26日)は小学校が99.1%、中学校が89.9%。となっている。公立の学校ではほぼ100%の実施率。それも学校給食費の平均月額は、公立小学校で約4,343円、公立中学校で約4,941円である。1回当たり約200円の負担。この素晴らしい給食という制度、他の国ではほとんど実施されていない。カンボジアなど日本が指導し一部の国で実施され始めているが、100%実施は世界中で日本だけである。

妻は「家でいつも美味しい食事を作っていれば、子どもは家で食事をするので夕食時になっても必ず帰ってくる。だから非行防止にもなる。」とよく言っていた。確かにうちの子どもは、外食を好まなかった。衣食住とあるが、人間が動物である限り「食」が一番の欲望だろう。現代の子どもたちの中にも、私のような給食を楽しみにしている子もいるのではないだろうかと思う。
現在の親も子どもの頃より給食はあった。あるのがあたり前の中で、そのありがたさや学校給食を支えて来た多くの関係者の努力を知る由もないだろう。私も知らなかった。私もあたり前だと思っていたひとり。しかし、数年前ある日本の学校給食を支えてこられた先生にお会いしてから、日本の学校給食への考えが変わった。驚くべき話を聞いた。「現代社会では子どもたちの食事はかなりの確率で崩壊に向かっている。朝食を食べてこない子が多くなり、外食機会が増え、共働き世帯では手間の込んだ料理を作れなくなり、インスタント食品への代用などがその原因。だから、今の学校給食は子どもが1日最低限必要な栄養をしっかり給食で補填出来るように作られているし、献立が家庭の献立になるようにも考えられて作られているんだ」と。本当にありがたいと思う反面、大切な家庭の食事が崩壊し始めてこれで良いのかと思う。
「おふくろの味」はもう死語になってしまうのだろうか…。

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